SNSが浸透したおかげか、「好き」を起点に仲間を集めることが、より容易くなったように感じます。
けれども継続的なグループ活動のために、集まった仲間たちとどんなふうにコミュニケーションをとって、どんな段取りで活動を進めていくのがよいのか。まだまだ、不透明な部分が多い気もします。
青森県十和田市を中心に活動する「和酒女子」も、「好き」を起点に集まった女性グループ。日本酒が好きな女性たちが、日本酒と十和田の魅力を発信しています。
和酒女子のメンバーは仕事や家事など日々多忙に過ごしているため、毎週のように顔を合わせているわけではありません。
けれども和酒女子は、お酒の仕込みから商品の企画・発売をしたり、青森県外でワークショップも実施したりと、その活動実績には目を見張るものがあります。
決して頻繁な活動ではないけれど、コンスタントに活動を続ける和酒女子は、今年で5年目を迎えるのだそう。
今回編集部は、和酒女子のみなさんと一緒に日本酒と十和田のお料理を囲みながら、これまでの和酒女子の活動変遷や、メンバーそれぞれの想いについて教えていただきました。
和酒女子の活動スタイルのキーワードは、「義務感を出さない」。
メンバーの皆さんにお話をお伺いして思いました。
義務感を出さないことがメンバーそれぞれに「モチベーション」をもたらし、それが結果的にグループ活動の「継続と活性」につながるのかもしれない、と 。
事業としての「和酒女子」が終わってから、しばらく活動をしていなかった
── 和酒女子が始まった経緯について教えてください。
野呂 佳織(以下、野呂) もともと、観光庁の事業に採択された十和田市観光協会の企画として、日本酒と女性をテーマに観光PRをしようという企画があったんです。
そこで集められた十和田市の日本酒好きな女性たちが「和酒女子」。
野呂 佳織(のろ かおり)
和酒女子の代表。和酒女子での愛称は、「組長」。
上川原 静(以下、静) つまり和酒女子は、市役所や観光協会の中から「日本酒が好き」な女性が推薦されて集まったグループなんです。
十和田市役所からは、私と神保さんが選ばれました。藤澤さんは、観光協会から電話が来て、一本釣り(笑)。
上川原 静(かみかわら しずか)
和酒女子での愛称は、「お燗番娘」。
神保 春美(じんぼ はるみ)
和酒女子での愛称は、「女酒豪」。
藤澤 早苗(ふじさわ さなえ)
和酒女子での愛称は、「女重鎮」。
藤澤 早苗(以下、藤澤) 和酒女子は現在、メンバーは11名で、十和田市以外にもお隣の七戸町や青森市、千葉県にもメンバーがいます。
── 現在は、日本酒の仕込みや販売、ワークショップも手がけていると伺っていますが、初年度からこのような構想があったのでしょうか?
野呂 いえ、コンテンツとしては継続していくという意向で始まりましたが、長期での具体的な計画までは立てていませんでした。
事業としては、日本酒のワークショップと、居酒屋クーポンの発売、観光ガイドブックの制作、和酒女子と行くバスツアーを開催しました。
とてもよい経験をさせてもらったけれど、事業が終わってから丸々1年間はなにも活動しませんでした。
事業から離れてからすぐは、「和酒女子として、なにかをやっていこう」という気持ちは全然なかったんです。
── 1年間活動をしていなかったにも関わらず、また集まろう!となったきっかけはなんだったのでしょう?
静 十和田市の酒蔵「鳩正宗」の杜氏である佐藤企さんが、声をかけてくれたんです。
「日本酒の仕込みをやらないか?」って。
野呂 もともと、事業として和酒女子をやっていたときから「お酒づくりや仕込みをしてみたいね」って話はしていたんです。
けれど、事業内の取り組みとなると、やっぱり成果が求められる。仕込みの時期は事業の終わりの時期だったから実現できなくて。
そんな経緯があっての佐藤さんからのお声がけだったので、嬉しかったですね。もともとお酒が好きで、和酒女子を通してお酒を飲む仲間ができて、「また日本酒でおもしろいことができるならやりたいな」と思っていたので。
神保 でも仕込みをやった年も、その先のビジョンがあったわけではないんです。「仕込み楽しかったね、来年もできればいいね」くらいの気持ち。
事業から離れてしばらくは、グループ活動というよりかは、単なるイベント参加のような感覚でした。そこから何回も仕込みを繰り返して、いろんな人たちの応援や後押しがあって、今があります。
藤澤 今は日本酒を絞った後の酒粕を使った酒粕せっけんや酒粕パンの商品化を考えています。飲み会を重ねるうちに、おしゃべりの中から自分たちがやりたいことも深まっていった気がしますね。
地元酒蔵「鳩正宗」からオリジナル商品『好きになっちゃった』を発売したことで生まれたグループ感
── 和酒女子さんが実際にオリジナル商品を発売することになった経緯を教えてください。
野呂 2015年に初めての仕込みだったんですけど、その様子がテレビや新聞で報道されたんです。
そうしたら周りの人たちから「あのお酒は販売しないの?」と声をかけられるようになって。
私たち、当初は全然そんなつもりはなかったんですけど。周りの後押しもあって、翌年は本当に発売するつもりで仕込みをしました。
藤澤 ネーミングからコンセプトまで考えるために、あの時期は頻繁に集まりましたよね。
静 そうですね、デザイナーの吉田進さんがラベルを考えてくれたんですけど、私たちよりも熱を持って考えてくれていた気がします。
そうしてできた商品は、『八甲田おろし 特別純米酒 好きになっちゃった』。
杜氏の佐藤さんを始め、「和酒女子はたくさんの十和田の方に支えられているな」と感じる商品となりました。
野呂 『好きになっちゃった』が商品化されたのは、和酒女子にとって大きな起点でした。
その頃から、「日本酒だけじゃなくて、十和田市の広報も兼ねているんだ」という自覚が生まれてきた気がします。
静 たしかに。和酒女子という名前は事業のときからあったけれど、私たち自身が「グループなんだ」って自覚したのは、商品だったりラベルだったり、形ができてからの方が正しいかも。
「もっと和酒女子の活動を広げたい」。きっかけは、秋田遠征
── 現在は、「酒粕せっけん」や「酒粕パン」の商品化を考えているのですよね。そういうインスピレーションはどこから得ているのですか?
野呂 事業のときに開いたワークショップで、酒粕パックを実践する講師の方が来てくださったんです。酒粕パックはすごく効き目があって、当時の私たちも印象的でした。
神保 それを実際に、私たちが主体となってやろうと思ったきかっけは「秋田遠征」。
静 私の大学の友だちが秋田出身の子なんですけど、秋田の由利本荘市で『日本酒女子カフェ』というイベントを企画していたんです。
その子づてに「和酒女子さん、出展しませんか?」とお誘いが来て。ワークショップなので、なにをやるかってなったときに酒粕パックがいいんじゃないかと。
藤澤 実際にワークショップでやってみたら、体験してくださった方の反応がよくて。「こういうの商品にすればいいのに」って言ってもらえたりしたんです。
ただ飲んでいるだけの集団でもおもしろいんだけど、もっとおもしろいことができるかも!と、秋田遠征をきっかけに思いました。
神保 こんなに反応があるのなら、もっと外に向けて和酒女子の活動をしてみよう!という気持ちになりましたよね。
だから今年の仕込みは、初めて和酒女子以外の方の参加も募ってみたりしました。
Facebookでしか告知していなかったけど、定員が3日くらいで埋まって、県外から来てくれた方なんかもいたりして。
静 秋田に行ったときに、新潟とか、自分たち以外の日本酒好きのグループに出会えたのも大きかったです。
他の地域の活動をお聞きすると、浴衣で日本酒を飲むとか、田植えをするとかいろんな活動の展開の仕方があるんだなと知って、とても刺激的でした。
「楽しそう、おもしろそう、美味しそう」をモットーに、義務感を出さない活動を
── 今年度は、どんな活動をしたいと考えていますか?
藤澤 まずは、例年通り仕込み。
あとは酒粕パンと、酒粕せっけんの商品化です。発売まではいけるかわからないけど、できるところまで進めてみたいです。
それと、浴衣で日本酒を飲む会とかやってみたいですね。和酒女子メンバーと前回の仕込みに参加してくださった方々ををお呼びして(実際、2018年7月に「浴衣で日本酒をたしなむ会」は開催された)。
野呂 とは言っても、和酒女子はかっちりとした1年計画は立てません。いつも、行き当たりばったりなんです(笑)。
飲み会の雑談で発した「あれやりたい」が、ちょっとずつ形になっていく感じ。「和酒女子だからこれをやらないと!」って気持ちは一切ありません。
── かっちりとした活動計画を立てないのは、どうしてですか?
野呂 義務感を出さないためです。
「今年はこれやらないと」って気持ちになると、形にしていく過程がしんどくなったり、形になっても続かない可能性があると思っているので。
メンバーが楽しくなければ、活動していても意味がない。和酒女子は、メンバー自身がやりたいことを無理なくできることを心がけています。
静 組長(野呂さん)の進行の仕方が、活動のやりやすさやモチベーションの維持につながっていると思います。
「やりたい!」って言ったことをすぐ周囲に共有してくれる素早さがあるのに、グループ活動の最低ラインを設けないから。
藤澤 和酒女子はこれからも、「楽しそう、おもしろそう、美味しそう」を軸に、活動を展開していきたいなって思います。もちろん、みんな自分の生活でできる範囲で、無理なく。
── 楽しそう、おもしろそう、美味しそう。
静 私たち自身はただ、その3つを軸にやりたいことをやっていただけなんですけど。和酒女子を始めてから、「ただの酒飲みじゃなくなったなぁ」って思います(笑)。
藤澤 酒粕パックや、酒粕パンなんかは、「日本酒のおもしろがり方は、飲むだけじゃない」と知ることになったわけだしね。
神保 それと日本酒を通して、日本各地のことを知ることもできるってことに気づいたりもしました。日本酒は水と米と麹でつくられていて、その原料もだいたい地場産品だから。
また、酒蔵って日本各地にあるけど、どこにでもあるわけじゃない。酒蔵がある地域はすごく、宝を持っているなって思うようになりました。
野呂 日本酒っておじさんが飲むものとか、酔っ払いのイメージが先行しがちだけど。じつは知れば知るほど奥が深くて、おもしろいもの。
和酒女子を通して、もともと日本酒好きだった私たちが、もっと日本酒のおもしろみに気づけたことが、いちばん嬉しいことだと思っています。
編集/小山内彩希
写真/小松崎拓郎
(この記事は、青森県十和田市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
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